デジタルヘルスで患者エンゲージメントを高めるには?
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いまの「患者体験」は以前よりもはるかにオンライン化が進んでいます。患者は医療機関(HCP)に赴く前に、オンラインで情報を検索するのが当たり前になっています。対面で提供される昔ながらの患者ケアが見直される動きもあるとはいえ、デジタルヘルスは一過性の流行ではなく、今後も続く流れであると見るべきでしょう。では、デジタルヘルスはどのような形で患者エンゲージメントを高め、なぜ重要といえるのでしょうか?
患者エンゲージメント…患者と医療専門家との関わりを強化することで、それにより自分の健康状態や治療の選択肢についての理解が深まります。患者の医療情報へ関わりが高まるほど、医療提供者は患者の優先順位に合わせて対応することができます。そのため、健康の公平性にとって極めて重要と考えられています。
デジタルヘルスとは?
デジタルヘルスとは、医療にテクノロジープラットフォームを導入し、医療情報を伝えたり、疾病を発見、予防、管理、治療したり、健康やウェルネスの増進に役立てたりする仕組みの総称です。概念としては、健康IT、mHealth(「モバイルヘルス」とも呼ばれる)、ウェアラブルデバイス(スマートウォッチなど)、遠隔医療/遠隔治療など、患者ケアに包含されるさまざまなカテゴリーを含んでいます。したがって、デジタルヘルスに用いられるツールにも、下記のように多様なものが含まれます。
- 患者ポータル
- 生体センサー
- ウェアラブル
- オンライン受診
- 医療関係のEメール、テキストメッセージ
- デジタル請求、デジタル決済
- 電子健康記録(EHR)
- ソーシャルメディア
- 画像処理技術
デジタルヘルスは、新型コロナウイルス感染症を契機として急速に普及したのも事実ですが、それよりもはるか前から、グローバルに患者エンゲージメントを高めるために、デジタルヘルスという最先端テクノロジーに投資してきた企業は少なくありません。
デジタルヘルスツールが患者エンゲージメントに与える影響
CDC(米国疾病対策予防センター)の調査によれば、患者エンゲージメントが高いほど、その患者は良好な健康アウトカムや患者体験が得られる可能性が高くなります。患者エンゲージメントが高ければ、医療機関としては、患者さんの視点に立ちやすくなり、疾病や治療の選択肢について患者さん自身が理解を深められるような情報を伝えたり、信頼関係を形成したり、患者さんだけでなくコミュニティや支援システムも巻き込んだ良好な長期的関係を育てたりといったことがしやすくなります。
デジタルヘルスを活用することで、医療機関は患者さんと効率的に連絡をとり、患者さんの好みに合わせてコミュニケーションを図ることができます。また、症状に波がある慢性疾患や不調に関して、侵襲性が低く患者さんが比較的自由にコントロールできる形で監視や治療を行う際にも有益です。いわゆる「患者中心医療」と呼ばれる医療です。
デジタルヘルスのテクノロジーには、患者体験の向上だけでなく、社会的に恵まれない層が医療にアクセスしやすくなるという効果があります。たとえば、農村部に住んでいて近くに病院がない場合に、これらのツールを活用すれば、患者はリモート医療により自宅を離れなくとも質の高い医療を受けることが可能になります。
医療へのアクセスが困難な状況は、場所の問題以外にもさまざまな要因で発生する可能性があります。テクノロジーを開発する際には、患者さんの年齢、人種、言語、社会経済的地位、性別をはじめとする無数の要因を考慮した上で、あらゆる人が平等に健康情報を得られるようにしなければなりません。
たとえば、Accentureが2020年にまとめたレポートでは、数カ国で2,000人あまりの消費者を対象に調査を行い、若い世代の患者は対面よりもオンライン医療を好むという結果を報告しています。
図1:https://www.accenture.com/us-en/insights/health/leaders-make-recent-digital-health-gains-last
このデータを見れば、医療機関がデジタルヘルス用プラットフォームを導入してオンライン診療を始めようとする場合、新しいプラットフォームを勧める対象は比較的若い患者が中心になると予想できます。
デジタルヘルス向けプラットフォームを導入して患者エンゲージメントを高めるための4つのポイント
デジタルヘルスの世界では、次々とイノベーションが生まれており、患者さんへのアプローチ、サービスやサポートの提供など、患者エンゲージメントを高めています。ライフサイエンス企業に求められるのは、こうしたツールを患者さんや医療機関で導入してもらい、活用してもらう方法を洗練させていくことです。デジタルソリューションのマーケティングでは、地域によってコンプライアンスや管理体制の面で配慮が必要な場合もありますが、ここでは、どの地域でも共通する4つのポイントをご紹介しましょう。
1) 患者中心の設計
デジタルツールで患者エンゲージメントを高めるための最大のポイントは、患者さんの立場から見て使いやすいツールを設計することです。UIが使いにくいツールは、患者さんに使ってもらえません。市場の状況を把握し、患者さんの好みやツールの使いにくい部分もしっかり検討して、ツールの価値を高め、継続的に使ってもらえるようにする取り組みが不可欠です。
2) オムニチャネル戦略
患者さんが見やすい場所に情報を届けましょう。デジタルヘルス用ツールは、すでに多数存在し、今も盛んに開発が行われています。こうした状況では、ツールは患者さんの好みに合わせられることが重要です。たとえば、新しい治療方法に関する情報をEメールで受け取りたい患者さんもいれば、SNSのキャンペーンに参加する方式を好む患者さんもいるでしょう。必要な健康情報を患者さんに届けるアプローチは幅広く用意し、かつ、どのチャネルからアクセスしても同一の情報が得られるようにすることが重要です。
3) 多言語・多文化対応
地域や文化圏をまたいで事業を展開するグローバル企業の場合、英語で万全に運用できない、いわゆるLEP(Limited English Proficiency)に該当する患者さんや、まったく英語が話せない患者さん向けに、重要な健康情報の翻訳・ローカライズが必要です。精度が高く認証を受けた翻訳があれば、ヘルスリテラシーが向上し、アプローチできる患者さんの集団も多様になるため、健康管理に対する意識を高める効果も期待できるでしょう。
4) ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン
デジタルヘルス向けツールの開発やマーケティングにおいて、言語関連以外で注意すべき点として、あらゆる利用者を想定する、ということがあります。多様なバックグラウンドを持つ人も、すべて想定することが重要です。例えば、製品テストを行なう際に、通常機能のユーザビリティだけなく、障がいを持つ人にとってのアクセシビリティの観点からの検討も行いましょう。ある調査で、5つのデータベースに登録された5,968件のソースに対して文献調査を行なった結果、デジタルヘルス向けテクノロジーのうち「インクルージョン」に関する基準を満たしたものは、わずか25件でした。人種や障害、居住する国、使用言語、年齢などを問わず、誰もが平等にアクセスできるデジタルヘルス向けツールを提供するためには、テキストの大きさ、フォント、色、操作性に配慮するほか、「WCAG 2.0」(米国法律)をはじめとする各種ガイドラインや規制を参照することが不可欠です。
デジタルヘルスの普及はこれからも止まりません。患者体験はパーソナライズが進み、患者エンゲージメントや健康アウトカムも向上するでしょう。そんな中で、医療機関はデジタルヘルスのプラットフォームを活用することで、きめ細かい患者ケアを実現しつつ、対応する患者さんの幅を広げることもできます。
以前のブログ記事で、中国でデジタルヘルスを活用した医療を提供する際のポイントを扱っていますので、ぜひご一読ください。また、患者エンゲージメントを高めるトランスパーフェクトのデジタルソリューションにご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお問い合わせください。