グローバルなコンテンツソリューションが薬事チームにもたらす3つのメリット
規制を取り巻く環境が変化するなかで、製薬企業は、どのようにしてコンプライアンスを維持し続けるのか、既存の体制から、その戦略をシフトすることが求められています。コロナ禍でリモート環境へのシフトが進んだことを受け、薬事業務に対応する部門もまた、少しずつワークフローのデジタル化を実現してきました。リモート環境へのシフトによって、これまでになかったような複雑さや課題が生じていますが、デジタル化は、申請業務に要する時間を短縮し、協働を加速させながら、他方では薬事規制への対応に関連したあらゆるプロセスの可視性を高めるという、新たな側面をもたらしています。たとえば、薬事規制への対応に関するトピックとして、EU-CTRによるIMP(治験薬)のラベリングのワークフローについて定めたAnnex VIが、結果的に臨床試験の安全性と効率をどのように向上させるのかについて注目が集まっています。
薬事業務を行う部門は、大量の規制関連文書を、これまでよりも短いスケジュールで処理するという対応に迫られています。そういった課題に対応するため、デジタル化、プロセスの自動化、一元管理化は、製薬企業が規制当局への対応を適切に実施するために欠かせない部分です。データの量と種類は増え続け、ますます管理が複雑になるなか、業界のデジタル化と最適化はさらに進むと考えられます。
薬事チームのグローバルな課題
グローバルに活動する薬事部門は、新たなテクノロジーを管理し、活用するうえで、多くの課題に直面しています。自動化テクノロジーの導入はさまざまな領域で進んでいますが、大きな懸念のひとつは、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、カナダ保健省をはじめとする、世界のさまざまな規制当局の間で規制が調整されておらず、個々の規制要件に幅広く対応し続けなければならないことです。
また、さまざまな対応が分散化した状況も製薬会社にとって大きな課題のひとつであり、クオリティ、プロジェクトの期限、費用対効果の可視化などに対して、さまざまな影響を及ぼすこともあります。製薬会社は、地理的地域、事業ユニット、治療領域を横断して全社的にスケールアップする視点を持たなければ、薬事規制の調和を目指す状況のなかで、リソースを効果的に活用しているか否かについて疑問視されたり、競争上難しい立場に立たされたりすることになるでしょう。
ある研究では、薬事規制のグローバルな調和への動きのなかで、申請に関わる時間を短縮し、安全性リスクを軽減するために、2025年までに規制当局が国内だけでなく国家間レベルで連携するようになると予測されています。それまでの間、テクノロジーの枠組みを十分に活用して、複数の申請を一元管理し、常に足並みをそろえて環境の変化に対応できるようにしていくことは、最も優先度の高い課題となるでしょう。
グローバルなコンテンツソリューションが薬事チームにもたらす3つのメリット
1. 申請スケジュールの短縮
グローバルな薬事規制担当チームにとって、プロジェクトのスケジュールを厳守し、厳しい期限に対応しつつ上市までの時間を最大限に使うことは大きな課題です。特に大量の文書を処理する必要に迫られているチームでは、クオリティが複数のチーム間で一致していなければ、スケジュールが乱れて、期限に間に合わない事態になりかねません。
AIを活用したワークフローを導入して、規制対応文書を適切に処理できるようにすれば、プロジェクト管理にかかる時間やコストを削減してスケジュールを短縮できるだけでなく、規制当局の承認申請で求められるコンテンツの分量に対応できる、より大きな調整幅を持つことができます。また、申請文書を複数の言語に翻訳するプロセスも効率化できます。一元管理型のソリューションによって、翻訳メモリ(TM)、用語集、スタイルガイドを適切に利用できるようになれば、市場ごとに異なる要件を適切に把握できるようになるので、翻訳の効率が高まるだけでなく、ミスに起因するプロジェクト遅延を抑えることができます。
2. 一貫性を確保し、規模の増減に対応
規制対応ワークフローがあまりに分散化してしまうと、プロジェクトのコストやパフォーマンスといった全体的な指標への視点が欠落したり、申請文書のクオリティ全体に問題が生じる可能性があります。グローバルな規模を持つパートナーに対して、個々の翻訳プロジェクトはローカルチームが管理を担当する場合、しばしばクオリティや可視性に関わるインサイトが不足する場合があります。さらに、製薬会社にかかるリスクや罰則規定について十分に考慮せず、複数のプロセスがあって一貫性の欠如した状態が続くのであれば、後になって大きなコストとなる可能性もあります。
薬事規制に関するコンテンツを、AIと連携させながらグローバルに一元管理すれば、薬事チームは規模の大きさに対応できるようになり、承認申請の全体的なプロセスでクオリティや一貫性を損なうことなく、大量のコンテンツを処理できるようになります。それを可能にするのは、文書を効率的に編集するワークフローや、厳密なバージョン管理、ワークフロー全体にわたるコンテンツ評価の仕組みです。レポート機能が組み込まれていれば、薬事チームはプロジェクトの進捗をモニタリングして、問題があれば速やかに対処できるため、コンプライアンスやクオリティのリスクを抑えることができます。こうした戦略を実施すれば、およそ6カ月で、全体としてプロジェクト管理にかかる時間を最大53%削減し、翻訳のサイクルタイムを最大70%短縮することも不可能ではありません。
3. ROIの最大化
管理の一元化を推進して、複数の施設を管理するコストを削減させることにより、製薬企業はROIを最大化できるでしょう。一元管理用のプラットフォームを構築するための初期設定費用に一時的に投資することで、効率的なプロジェクト管理のワークフローが実現します。また、AIや自動化を組み込めば、トレーニングやプロジェクト管理の時間などのFTE関連コストを削減できます。こうした取り組みはすべて、容易に追跡したり、レポートを作成することができます。
さらに、データが一か所に囲い込まれてアクセスが妨げられることを避けて、データのモニタリングやレポーティングを効率化していけば、財務的なリスクを軽減できます。世界各地の実施医療機関を含めて規制に対応したワークフローを改善させて、相互接続のコンセンサスを確立していけば、ミスや遅れは少なくなり、ROIの改善や上市までの時間のさらなる短縮を実現できるでしょう。つまり、適切な一元管理の戦略を導入することにより、承認申請プロセス全体で大幅なコスト削減に期待できるのです。
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