高品質の多言語翻訳コンテンツを作成するための7つのツール
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弊社の翻訳サービスで、貴社コンテンツをターゲット市場向けにローカライズし、グローバル市場での成功につなげるお手伝いをします。グローバル企業は多言語の品質(=翻訳)を重視します。企業は時間、予算、リソースを節約するため、1回の納品で高い品質を実現するよう求めます。このガイドでは、高品質の多言語翻訳を実現するための7つのツールについてご紹介します。一度で最高の品質の翻訳を実現するために、ぜひご一読ください。
目次
- スタイルガイド
- コンテキスト(文脈)と参考資料
- 用語集
- 翻訳メモリ
- ローカライゼーションのワークフロー
- 専任チーム
- フィードバック
- おわりに
1. スタイルガイド
「スタイルとは言葉を使わず自分を表現する手段」 – レイチェル・ゾー
スキルが高いプロの翻訳者に、良質なスタイルガイドを渡すことで、翻訳者はお客様の意向や好みを把握し、翻訳に反映することができます。
お客様と新たなパートナーシップを築く際に、弊社は通常、スタイルに関するご要望について質問させていただきます。このようなアプローチをすると、お客様が驚かれることがあります。適切な経験や知識を持ったプロの翻訳者を選定し、サービスを提供している弊社が、こうしたことを行うことに疑問を持たれるのは当然かもしれません。しかし、これこそが弊社のサービスです。弊社の翻訳者はお客様のメッセージをターゲット言語に翻訳して届ける高いスキルを持っていますが、お客様の声をお聞きすることも大切にしています。
お客様は、翻訳元となる英語や日本語のコンテンツを作成する際には、膨大な量の市場調査を実施し、トーンや形式、スタイルについて慎重に検討して、コンテンツを公開します。
このような詳細情報は通常、スタイルガイドやブランドガイドに記載されます。このプロセスは絶えず続き、お客様のブランドの成長に応じて変化する場合もあります。
翻訳でも、これと同じプロセスをたどることが必要です。お客様のコンテンツがターゲットの心をつかみ、信頼関係を築く必要があります。言語ごとの翻訳用スタイルガイドを作成すれば、大きな効果を得られます。
スタイルガイドの目的は、お客様のブランドの本質をとらえるとともに、各地の調査結果を考慮し、それぞれのターゲット言語の文化的な側面や微妙なニュアンスにも配慮して、お客様のコンテンツを作成できるようにすることです。
このような資料を作成するプロセスには時間を要し、各国の関係者とのコミュニケーションが必要であることを弊社は理解しています。ご要望に応じて、弊社はお客様が効果的なスタイルガイドを作成するサポートをいたします。
翻訳用スタイルガイドは継続的に更新され、特に新規市場に進出する際に大きく内容が更新されます。過去の情報から、このようなケースではスタイルガイドが有効であることが証明されています。翻訳者はプロジェクトごとに明確になったルールを報告し、翻訳用スタイルガイドも徐々に進化していきます。
2. コンテキスト(文脈)と参考資料
「私にとって、コンテキストは鍵であり、すべてを理解するための糸口となる」 – ケネス・ノーランド
コンテキスト(文脈)をつかめば、追加情報を把握することができます。翻訳者はコンテキストを読み、ソースコンテンツの本質をより深く理解します。
ローカライズされるコンテンツは、大規模なプロジェクトの一部であることが珍しくありません。コンテンツそのものは頻繁に再利用されますが、カタログやWebサイト、キャンペーンなどから、翻訳者はコンテンツ情報や補足情報を得る場合があります。
ソースコンテンツにこのような追加情報がなければ、誤訳が発生しやすくなります。お客様から依頼を受ける際に、こうした視覚的な参照物が提供されれば、このような事態を防げる可能性が高くなります。
翻訳者の作業を支援するため、最先端のコンピュータ支援翻訳ツールは、お客様のニーズに合わせて進化を遂げています。ツールの多くに、コンテキストを参照するためのプレビュー機能が導入されています。ソースのレイアウトに訳文を載せるとどのように見えるかを表示する機能です。翻訳がどのように表示されるかを事前に大まかに知ることができます。
また、参考資料には通常、お客様のプロジェクトを翻訳する際に把握するべき事項を伝えるための、翻訳者への要望が記載されています。たとえば、お客様が好ましい、あるいは避けたいと考えている過去の翻訳例、ソフトウェアのスクリーンショット、翻訳に関わる製品の画像といった参考資料があります。
3. 用語集
「名正しからざれば則ち言順わず」 – 孔子
用語集は、使用するべき特定の用語、あるいは使用を避けたい用語を指定するものです。
翻訳用語集は、翻訳者が特定の用語を把握するうえで欠かせないツールです。コンテンツによって、1つまたは複数の用語集が用意され、さまざまな種類のコンテンツを区別する場合があります。たとえば、マーケティング用と技術文書用に用意された、それぞれ別の用語集を管理することがあるかもしれません。同様に、UIは翻訳しないままで、カタログをローカライズする場合、そのようにUIを英語のままにするために明示することが推奨されます。
異なる種類の用語集を使用することは珍しくありません。「ブラックリスト用語集」を用意し、翻訳者が使用してはならない用語をはっきりと認識できるようにすることもできます。「グレイリスト」を作ることもあります。使用を避けたい場合でも、コンテンツの中で使用されている可能性があり、翻訳者がなるべく使用しないようにする必要がある用語のリストです。ソース言語の用語をそのまま残すように翻訳者に伝えたいときに、用語集を使用して、指示することもできます。この場合、ターゲット言語のエントリにソース言語と同じ単語を指定します。
多言語の用語集をお客様が選定した翻訳パートナーに送る際には、Excelファイル、または他の翻訳管理システムからエクスポートした形式で送ることができます。このような用語集は、「用語ベース」として翻訳ツールにインポートされることで、翻訳プロセスの自動化と品質保証に利用されます。翻訳コンテンツに用語集に記載されている用語が入っている場合、このツールで翻訳者に注意を促します。翻訳された用語のエントリが存在し、ターゲット言語で適切に使用しなければならないことを伝えます。
用語集の単語は、各国の関係者の承認を受けることが推奨されます。また更新や変更があれば、できるだけ早急に報告され、その後の翻訳に反映されるよう徹底しなければなりません。
用語集が用語管理にどのように役立てられるかについて、詳しくはこちらより、このトピックに関する詳細なガイドをご覧ください。
4. 翻訳メモリ
「今日の特別な瞬間が明日の思い出になる」 – 出典不明
翻訳メモリには過去の翻訳が格納されています。翻訳の一貫性や品質、コスト、スピードの向上に役立てられます。
翻訳メモリは、翻訳会社にもフリーランス翻訳者にも広く使用されている一般的なツールです。実際の翻訳メモリの中身は、ソース言語とターゲット言語の翻訳の多言語テーブルとなっています。
用語集と同様に、翻訳メモリはコンピュータ支援翻訳(CAT)ツールに統合されており、データを効果的に活用することができます。
翻訳対象のドキュメントを送ると、CATツールが、メモリ内のコンテンツと類似する、あるいは完全に一致する文を分析します。さらに、翻訳メモリから再利用された翻訳を、翻訳者が必要に応じて編集またはそのまま利用します。
翻訳メモリは通常、最初は空になっています。以前、別の翻訳会社に翻訳を依頼していた場合、翻訳メモリのエクスポートファイル(.tmxファイル形式)があれば、メモリを引き継いで活用し、より良い翻訳を実現して、メリットを得ることができます。
翻訳メモリのエクスポートファイルがない場合でも、過去に翻訳したコンテンツがあれば、ソースとターゲットのテキストを照合させ、翻訳メモリを作成することも可能です。翻訳メモリ作成にはコストが発生します。通常、十分な量の翻訳済みコンテンツがあり、翻訳と原文ソースとのマッチ度が高い場合のみ(乖離がない)、推奨されます。翻訳会社は、このサービスにプラスして、さらなるガイダンスを提供できなければなりません。
翻訳メモリはコスト削減に役立てることができます。ただし、このガイドで後述する「フィードバック」セクションも考慮しなければなりません。ソースコンテンツをレビューまたは編集するのと同様に、翻訳でも同じプロセスが発生します。翻訳サービスを依頼する際には、必ず翻訳会社にフィードバックを伝えましょう。翻訳会社は、フィードバックを翻訳者やプロジェクトマネージャーに共有します。翻訳メモリを使用している場合、最新の状態を維持するため、お客様のフィードバックを反映する必要があります。
翻訳メモリについて、詳しくはこちらより、詳細な情報をご覧ください。
5. ローカライゼーションのワークフロー
「重荷が人を押し潰すのではなく、背負い方が問題なのだ」 – レナ・ホーン
ワークフローがしっかりと設計されていれば、翻訳プロセスが合理化され、品質プロセスが確立されて、より効率的に高品質な成果物を得ることができます。
お客様の翻訳プロジェクトが単純であるか複雑であるかを問わず、ローカライゼーションのワークフローを用意する価値はあります。このワークフローには、お客様のプロセスとお客様が選定した翻訳会社のプロセスの両方が含まれます。
お客様の社内の組織は複雑に階層化され、承認、品質保証、プロジェクト管理のフェーズごとに担当者様が異なることも珍しくありません。さらに、複数の言語やコンテンツの種類に対して、翻訳、レビュー、レイアウト、最適化、Webサイト開発、コンテンツ検証、最終品質保証、視覚的なチェックといったプロセスが存在する場合があります。
ワークフローがあれば、誰が何を担当し、タスクやプロセスがどのような順序で進められる必要があるかを、フロー内の全員が把握できます。必ずしも複雑なドキュメントである必要はなく、中核となるプロセスの概要を示したメールで十分な場合もあります。
お客様が選定した翻訳会社は、社内のプロセスを総合的に把握しなければなりません。複雑なプロジェクトの場合、プロジェクトのキックオフコールを行うと良い場合があります。コールでは、翻訳会社とお客様のプロセスをすり合わせ、お客様が追加したいステップについて、パートナーに十分に情報を伝えたり、お客様が推奨するプロジェクト管理のアプローチと相反する部分がないかを確認したりすることができます。
6. 専任チーム
「団結は力なり。チームワークとコラボレーションがあれば、素晴らしいことを達成できる」 – マティ・ステパネク
人はそれぞれ独自の強みを持ち、学習して成長することができます。強力な翻訳チームを構築すると、長期的にメリットを得ることができます。
翻訳の依頼が繰り返し発生する場合、専任の翻訳チームを確立することをお勧めします。このチームは通常、3つの主要グループで構成されます。
1. すべての翻訳プロジェクトの主な連絡先となる、翻訳会社側の窓口担当者およびアカウント管理/カスタマーサービス担当者。
2. お客様側のプロジェクトマネージャー/コーディネーター、Webサイト開発チーム、社内/社外デザインチーム、その他必要となる中核業務担当者。必要に応じてコミュニケーションに参加する場合があります。
3. 翻訳者、パートナー、パートナーが管理するその他のスタッフ。プロセスにおいて不可欠なスタッフですが、ほぼその業務のみに注力し、通常は日常的なコミュニケーションに参加しません。
優れたチームは互いに協力し合い、プロセスを継続的に改善していきます。専任メンバーが担当することにより、チームは重要な情報を得て、記録し、発生する可能性のある問題の回避方法や適応方法を習得したり、新しい手法を活用したりすることができます。
翻訳の観点では、同様の点を用いながら、お客様の業界、コンテンツの種類、スタイルの要件に十分にマッチしている翻訳者を探します。常に完璧な結果が得られるとは限りませんが、専任チームと協働することで、さまざまな品質保証手法の導入、すべてのコミュニケーションの明確化、翻訳者がお客様のスタイルやブランドの傾向を把握するといったことが可能になり、翻訳品質を向上させることにつながります。
要件やコンテンツの種類が異なれば(法律文書とマーケティングコンテンツなど)異なる翻訳者が対応したり、翻訳サンプルを提出し、最もニーズに適合する翻訳者を選定したりすると効果的な場合があります。お客様が選定した翻訳会社が詳しくアドバイスするでしょう。
7. フィードバック
「学習の鍵はフィードバックである。これがなければ、何かを学ぶことはほぼ不可能だ」 – スティーヴン・レヴィット
フィードバックを送ることは、長期的に大幅な時間の節約につながります。フィードバックは翻訳者に送られ、翻訳メモリに反映され、継続的な改善に活用するため、翻訳会社内で管理されます。
お客様を担当する翻訳者は、プロとしての仕事を徹底し、フィードバックを十分に把握したいと考えています。フィードバックは、翻訳者がお客様のブランドやスタイルの要件に準拠しているかどうかを把握するために役立てられます。ただし、フィードバックは建設的でなければなりません。そのようなフィードバックから、翻訳者はどのように改善できるか検討します。
コンテンツごとにフィードバックを受けられれば、翻訳メモリに反映できるため効率的です。フィードバックは将来の翻訳にも生かされます。
お客様によるコンテンツの修正には、好みに合わせた調整、文字数制限への対応、原文からの逸脱、読みやすくするための微修正などがあります。特にターゲットのセグメントがソースのコンテンツと一致しない場合など、一部のフィードバックは翻訳メモリに実装できないこともあります。それでも、その内容はすべて把握され、その後の成果物に反映されます。視覚的コンテキストが必要なコンテンツで、何らかの変更がなされた場合、翻訳者にそれをフィードバックとして確実に伝えることは有益です。
翻訳者がお客様の基準を満たさない極端なケースでは、翻訳会社がお客様と相談し、より適切な解決策を検討します。
8. おわりに
このガイドをお客様の多言語翻訳プロジェクトの高い品質を確保するうえでお役立ていただければ幸いです。では、簡単なまとめで手短に7つのキーポイントを振り返ってみましょう。
1. スタイルガイドを提供する:お客様が希望するトーン、形式、スタイルなどのガイドを翻訳者に提供すれば、お客様のブランドのトーンを適切に把握し、翻訳に反映することができます。
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