AIでヘルスケアはどう変わるか?AIによる診断・治療
ヘルスケア業界におけるAIは近年、大きく進展しており、従来型の分析手法や臨床判断では得ることができなかった多くのメリットをもたらしています。特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックとロックダウンの期間中、ウイルスに関する理解を深め、即効性のある治療薬を開発するために、AIの力が必要とされました。その結果、医療施設や研究施設のデジタル化に拍車がかかっています。
こうした流れをうけ、2020年第3四半期には、医療関係のAIへの投資額は20億ドルに達しました。このような目覚ましい成長を遂げながら、AIによるヘルスケア業界の変革はさまざまな形で続いています。
1.AIと診断
2.AIと治療
3.AIと医療業務支援
●医療行為をサポートするAI
●病院の運営にまつわる課題を解決するAI
4.医療の未来はAIとともに
1. AIと診断
誤診や診断の遅れといった問題は医療業界で頻繁に発生します。こうした診断プロセスを改善し、人間の医療専門家よりもスピーディに病気を予測、診断するためにAIが活用されています。
例えば、がんの診断プロセスを見てみましょう。
・PathAIが開発する機械学習テクノロジーは、病理学者がより正確に診断できるよう支援し、診断プロセスで生じうるミスを極限まで減らして、より多くの人の命を救うことを目標としています。
・Freenomeは、がんをより早いステージで発見できるようにすることを目指し、がん診断のスクリーニング、診断テスト、血液検査でもAIを活用しています。
・ハーバード大学の大学病院のひとつであるベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターでは、死に至る可能性のある血液疾患の早期診断にAIを活用しています。医師がAIで強化された顕微鏡を用いて血液サンプルをチェックすることにより、人間の目で行う場合と比べて迅速に有害な物質やバクテリアを発見できます。こうした機械は、サンプル画像を用いてAIテクノロジーをトレーニングすることにより、血液中の細菌を検出したり、その存在を予測したりすることを学習します。精度が向上すれば、こうした機械によって、これまで以上に多くの人の命が救われることになります。
2. AIと治療
適切な診断ができれば、効果的な治療につながります。特異的な診断や病気に対して適切な治療法を判断して実施したり、効果的で的確な治療薬を開発する際にも、AIが活躍します。
・BenevolentAIは、AIとディープラーニングを組み合わせ、患者さんに適切なタイミングで治療を行うことができるよう、的確な治療について判定します。
・Atomwiseでは、エボラ出血熱や多発性硬化症といった重大疾病の治療にAIを活用しています。同社の開発するニューラルネットワーク「AtomNET」は、患者さんの特徴を把握し、臨床試験で生物活性を予測します。このテクノロジーにより、従来の製薬会社と比べ、開発スピードを100倍に高めることができます。
・BERGが提供するAI活用型の臨床ステージ向けバイオテクノロジープラットフォーム「Interrogative Biology」では、疾患をマッピングすることにより、高度で画期的な医薬品やワクチンの発見、開発のスピードを早めています。研究開発に「Interrogative Biology」を利用することで、医療のスペシャリストの手によって、希少な疾患を持つ患者さん個人に的を絞った製品や医薬品を開発することが可能になります。また、BERGが近年、治療法の開発に力を入れているのがパーキンソン病です。身体のふるえや筋肉の固縮などの症状があり、平衡感覚や協調、運動機能が徐々に失われていく難病です。AIを活用し、BERGは、これまで知られていなかった、人間の体内にある化学物質間のつながりを結びつけることができました。
3. AIと業務支援
医療の世界では、1秒1秒に人の命がかかっています。
1秒でも時間を節約できれば、それは大きな意味を持ちます。また、AIを用いた医療テクノロジーを取り入れることにより、病院は外来から入退院に至るまでのプロセス(ペイシェントフロー)を、よりスムーズかつ効率的に管理することが可能になります。
●医療行為をサポートするAI
例えば、病院にロボットが導入されている場合、医師が心臓切開手術のような医療行為を実施する際、正確性やコントローラビリティ、柔軟性を高めることができるようになっています。こうしたロボットはアームやカメラ、手術器具を備えており、手術に関わる医師の知識やスキル、経験を補強します。また、手術に臨む外科医はコンピューターのコンソールでこうしたロボットを操作し、肉眼では見えないような拡大像を使うことができるのです。
・Vicarious Surgicalは、AIを利用するロボットと仮想現実(VR)を組み合わせることで、最小侵襲手術を実施しながら、患者さんの体内をより詳細に確認できます。
・Auris Healthは、超小型設計の手術器具や内視鏡を備え、データサイエンスそしてAIを駆使して、内視鏡検査の精度を向上するロボットを開発しています。同社は、肺がんを調べ、治療法を見つけるAIロボットの開発に取り組んでいます。
このようなAIを搭載するロボットによる支援により、外科医療の課題が減少するだけでなく、患者さんの痛みが軽減され、回復が早まります。
●病院の運営にまつわる課題を解決するAI
また、単純で無駄の多い作業を、AIなどを活用して支援することで、医師や看護師は膨大な時間を節約し、より重要で高度な業務に注力できるようになります。
・Oliveは、医療における繰り返しの多い作業を自動化するAIベースのプラットフォームです。管理者やスタッフは、より多くの時間を、命に関わる優先度の高い作業に使えるようになるでしょう。このプラットフォームは、すでに病院で利用されているソフトウェアとシームレスに統合できるよう配慮されています。
・同様に、QventusのAIプラットフォームは、病院の運営にまつわる課題を解決し、患者さんの疾患と治療を優先します。例えば、病院の診察待ち時間の管理や、救急車の最適なルートの決定に役立つ機能を備えています。
4. 医療の未来はAIとともに
医療の世界におけるAIは、もはや特別なものではなくなりつつあります。治療を進歩させ、患者さんのエクスペリエンスを向上させ、膨大な数の患者さんや人々の命を救ううえで役立てられています。
ヘルスケアは現在最も成長著しい業界のひとつであり、2030年には市場価値が1944億ドルに達すると予想されています。病院、研究所、医師、そして患者さんにとって、AIの価値が明らかになっています。AIはただ未来のものというだけではありません。AIはヘルスケアの未来です。
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